法は人を救うのか?正義とは何だ?


老夫婦刺殺事件の容疑者の1人は、すでに時効となった 殺人事件の重要参考人だった。東京地検のベテラン検事と 正義感に溢れる若手検事が1人の男を追いつめていく。

君たちはその手に一本の剣を持っている。法律という剣だ。 こいつは抜群に切れる剣だ。法治国家において最強の武器と言ってもいい。 やくざの親分もその切っ先を見れば震え上がる。法曹というのは、それを 武器にして生身の人間をさばいていく仕事をしている。 



司法研修生に向けて語るのは、東京地検のベテラン、最上検事。 この研修を受け、検事を目指し、最上と再び仕事をすることに なった若手の沖野検事。 尊敬する上司とタッグを組んで取り組むのは老夫婦刺殺事件。 容疑にあがった数名の男たち。その中に、過去に暴行殺人事件を起こし、 重要参考人として呼ばれながら、証拠不十分として起訴されず 時効を迎えた男、松倉がいました。 最上検事の知り合いが過去に何者かによって殺された事件の、おそらく犯人 である男が松倉。警察も捜査を続けましたが、決定的な証拠に欠けました。 当時、事件を担当した検事は、確たる証拠がないために起訴できないという 判断に至ったのです。 今回の老夫婦殺人事件について、警察も慎重に慎重を重ねて調査をして いきますが、もしも意図的に犯人を仕立てあげようとしている人間がいたと したらどうでしょうか。しかも、警察官ではなく、検事によって。 この作品は、検事の仕事に焦点を当てただけのお話ではありません。 正義とは何か、法律の役割は何か、それを行使してすべきことは何か。 法律を手に、犯罪者を裁きにかける立場にあるのが検事です。 そして、ベテラン検事の最上は自分の職務を全うします。 その代わり、国ではなく、自分の法律にのっとって。 決して極悪人ではなく、優秀に仕事をこなし、順当に出世の道を 歩んできたベテラン検事が、なぜこんなことになったのか。 最上の職歴と周囲からの信頼度、友人や家族との関係、そうした彼と いう人間の厚みが丁寧に描かれているからこそ、彼が行なった行為には驚愕し、 その一方で納得する部分を感じるのです。 この作者の持ち味は、なんと言っても臨場感です。 最上が松倉を陥れようと、警察の捜査にそれとなく口や手を出す。 松倉ではない、真犯人を突き止めた後の最上の行動。 それは、まるで自分が現場にいて、最上の行動を覗いて見ているようで、非常に 緊迫した、それでいて臨場感が溢れた描写であり、読んでいてドキドキして しまいます。 若手とベテランの、自分自身をかけた正義の闘いです。 法律とはまさに剣であり、斬るものが扱いを間違えれば、斬られたものは 血を流し、時に命を落とす。その剣は合っているのか?斬り方は適切なのか? そして剣を持たない者は、斬りつけられるのをただ見ているしか ないのでしょうか。そして自分は斬られるだけことをしたのでしょうか。 真面目で正義感が強い人間ほど、「罪を裁く」という鎧を被って 生きていくことがむずかしいのかもしれません。 法律は本当に人を救うのか。正義とは何なのか。 改めて考えさせられる物語です。

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