何度でも巡り合う、運命の人

 美大姓の僕は、電車で見かけた美少女に、意を決して告白。 思いがけずOKをもらって、その日から付き合うことに。

まずは、この主人公の青年、地味な感じがいいですね。好みです。 ごく普通の、美大に通う静かな青年で、女性慣れしていない。 そこへ現れたのは、とびきりの美少女です。 知り合いでもない女性に声をかけるなんて、と自分でもびっくりするくらいの 衝動に突き動かされた、というのが運命的な何かを感じさせます。 ネタバレですが、2人は時が逆に進行する世界に生きています。 大学生として出会っているこの瞬間は、2人が同世代で生きていることが できる、貴重な時間なのです。 ここを境にして、青年は歳ををとっていき、女性は若くなっていくのです。 ここのあたりの経過は、ミステリのようにも楽しめます。 あの時、ああいう態度をとっていたのはこういうことだったのか!と。 この謎が解明するのは中盤あたりですが、そこからが切ない。 男性側は、2人の関係が近づくにつれ、もちろん思い出を共有し親密さが 深まっている、と思っているのですが、女性は違います。 今日の思い出は記憶に残らず、どんどんはじめて出会う状況に戻っていくのです。 そんな状況なのに、なぜ彼女は付き合う事にしたのか? そのためにどんな努力をしていたのか? そして、その秘密を知った後の2人の関係は? そんな事を考えながら、再度読み返してみるとまた新しい面白さを発見できます。 純粋な恋愛小説として楽しめる作品だと思いますが 個人的には、違う時の流れの中で、ほんの偶然から出会った二人が 時を超えて、場所を変えてちょっとずつ同じ世界を生きる、ということが ドラマチックでとても面白いな、と思いました。 本人たちはタイムワープしていないけれど、『時をかける少女』を 連想させるような。恋愛小説はあまり…という方でも、こうした構成と仕掛けの 面でも楽しめる作品だと思います。

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