いつの世も人の心はせつなく、そしてあたたかい

『ねこのばば』の

イラストブックレビューです。


病弱な大店の若旦那がとりまきのあやかしとともに、江戸の謎を解く

お江戸妖怪奇譚、第三弾です。

今回は、寝込んでばかりの若だんなが元気になった謎、仏に仕える

身でありながら自分を見失った者、目先の金のために我が身を差し出す者…

など、5編の短編集です。

個人的に印象に残ったのは、『産土(うぶすな)』というお話。

若だんなの兄いである佐助が、過去に仕えたお店でのお話です。

その店の主人は、店を回すための資金をどこからか手に入れます。

怪しく思った佐助が後をつけると、そこには妖がからんでいて…

結局、佐助が大切にしていた主人や若だんなを失ってしまうのですが、

そこには佐助の、ひとりぼっちで生きてきて、ようやく佐助と呼ばれた

その名に馴染み、自分の居場所を見つけたと思ったところでの出来事でした。

主人が自分に相談してくれなかったこと。

大切にしていた若だんなを助けられなかったこと。

佐助の悲しみ、苦しみはいかばかりなものか。

しかし、その経験が今の若だんなを何があっても死なせないのだ、という

決意へと繋がっていくのです。

大柄でコワモテな佐助ですが、とっても一途に主人と決めた人守り抜く、

誠実な人間、いや妖なのです。

仁吉がクールでかっこいいと思っていた私ですが、不器用で一途な佐助も

いいなあと転がりそうになりました。

いつの時代も一歩間違えればそこは闇。

どんな立場の人間であろうともそれはたやすく起きることなのだな、と

思います。しかし、それに反し暖かな心に触れるような出来事もあります。

自分の心の照準をどちらに合わせるのか。

普段から、人(又は妖)のありがたさに触れていれば決して闇に落ちることは

ないのだと、若だんなと妖たちのやりとりを見ていると感じます。

今回も満足度の高い内容でした。

ぬこのBOOK ROOM

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