あなたの過去、癒してみせる

『小暮写眞館III: カモメの名前』の

イラストブックレビューです。

顔なじみの不動産社長から渡された一枚の写真。

そこに写るぬいぐるみをカモメと主張する少年は、不登校の小学生だった。

英一は、関係者に話を聞く中で、ある映画に行き当たります。

その映画に出てくるのはまさに、問題のカモメでした。

映画の中でそのカモメはどのような存在なのか。

一緒に見にいった垣本順子は、そうしたことをズバリと言いあてます。

弱者である立場の小学生の状況や気持ちを理解しているのです。

ぶっきらぼうで危うい雰囲気の彼女がどんな過去を背負ってきたのか、

そこが気になります。そのぶっきらぼうなところも、彼女の弱さの

裏返しなのかな、とも思いました。

一方、写真館の以前の住人、小暮氏の足跡を追って、小暮氏の娘さんの

元を訪れる英一と弟のピカ。

小暮氏の生きてきた足跡を聞くにつれ、 自分が、自分たちが今、

生きているということ、この時代に生活しているということの実感を

2人とも感じていたのではないのかなと思います。

平和な時代に生きているわけですが、ある者は家族と、ある者は過去と、

またある者は現実と、皆それぞれ戦っているのですね。

そして、その戦っている周りには、守ってくれる、大事に思ってくれる人が

必ずいるということもまた事実。

小学生から40代、50代、60代あるいそれ以上の世代まで、幅広い人間の

心情を描き出し、読む人の心に余韻を残す宮部みゆきの筆力はさすがだなと

思います。

最終的に、小暮氏の幽霊と花菱家はどう付き合っていくのか。

垣本順子と英一の関係はどうなっていくのか。

幼くして亡くなった妹、風子は花菱家の中で禁忌なままなのか。

最終巻で全てが明らかになるのでしょうか。楽しみです。

ぬこのBOOK ROOM

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