夢の中で生きる事はすばらしい?

『私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?』の

イラストブックレビューです。

フランスの博覧会から脱走したウォーカロンたちが

潜んでいるという場所へ訪れたハギリたち。

そこは富の谷と呼ばれ、警察すら立ち入らない閉ざされた場所。

そこでハギリたちが目にしたものとは。

ウォーカロンシリーズ5作目、最終巻。

人工知能であるウォーカロンと人間の識別装置を研究開発している

ハギリ博士は、常にウォーカロンと人間の違い、人間の生に対する

価値観を考えながら研究を続けています。

今回訪れた場所では、人間が1人にあとは全てウォーカロンが住んでいます。

その人間に案内してもらった場所とは、ウォーカロンの脳のみが

保存され、各種コードに繋がっています。

このウォーカロンたちは、機能としては生きています。

彼らは自分たちが築き上げた理想の世界に住んでいるのです。

病気にもならず、怪我もしない。

美しく整えられた環境に身を置き、快適に過ごしています。

欲しいものはプログラミングすれば、手を汚す事なくすぐに手に

入れることができます。

このバーチャルの世界に招待してもらったハギリ博士。

理想的で美しい世界。しかし、肉体はここにあらず。

現実は雑多で、嫌なものもたくさんある。

怪我をしたり、疲れたり、不愉快な思いをすることもあるけど

それは肉体を持って生きているから。

肉体を持たずに、夢の世界で理想的に過ごすのは

快適かもしれないけど生きている実感はないのかもしれません。

しかし、この理想的な夢の世界に行きたい、とウォーカロンが

思うこと自体、人間の思考に近づいていることを

示しているのかもしれないなと思いました。

あらゆるしがらみから離れたい、そういった感じでしょうか。

研究者でありながらも生きるということの意味を考え続けている

ハギリ博士。人間と人工知能の境界が曖昧になって行く中で

人間の余計な機能ばかりが目についたりします。

儀礼的なやりとりとか、きまぐれな態度とか。

そんな生きていくにはムダなこととも思える要素こそが、人間に

魅力を持たせ、生きる事に楽しみを与えているように思います。

科学的な記述もありますが、難解ではなく、楽しんで

読むことができるシリーズです。全て読み終わる頃には、

登場人物たちが頭の中で出来上がり、動き出してくるようです。

人工知能あり、アクションあり、生きることについての命題ありと

読みどころが満載のsfアクション小説です。

ぬこのBOOK ROOM

人と本がつながるお手伝い。ブックレビューやおすすめの本をお知らせします。

0コメント

  • 1000 / 1000